鹿屋市 【検証】走行不能になったATミッションを分解してみよう 増満自動車

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【検証】走行不能になったATミッションを分解してみよう

これはミッション不具合により走行不能になったスズキMRワゴン(MF21S)のオートマチックトランスミッションです。症状は「Dレンジに入れてアクセルを踏んでも、まったく前に進まない(バックも同様)」といったもの。今回はなぜ走行不能な状態に到ったのかを分解して検証していきたいと思います。

オイルパンを取り外しました。現在見えているのはバルブボディという油圧で変速や湿式クラッチの制御をする装置です。

こちらが、外したオイルパン内部。ATFは真っ黒で、なおかつスラッジや摩耗屑のようなものが混ざりこんでいるような状態。

こんな感じです。鉄粉吸着用のマグネットにはこれでもか!というぐらいスラッジ(鉄粉)だらけ。

こちらは先ほどのバルブボディを分解した状態。迷路のようにオイルの通路が張り巡らされています。目立ったつまりなどは確認できません。よく「バルブに異物がかみこんで作動不良をおこす」といった表現をすることがあるようですが、このミッションについては、そのような状況にないようです。バルブボディ内部に小さなフィルターが数個あるのですが、どれもまったく詰まっていませんでした。

ただ・・・ご覧のように、バルブボディ内部のフィルターに捕まらないような「非常に細かなスラッジ状の汚れ」がATFとともに循環しているのはあきらかです。これらが仮に、細やかな鉄粉だとしたら油圧制御のシリンダー状の内壁などを傷つけたり摩耗させ、油圧リークが原因の油圧異常を起こしクラッチ制御に異常をきたしていた可能性もあります。

そしてこちら・・・ストレーナーです。内部のフィルターがほぼ詰まってしまっています。ストレーナーは、オイルパン内のATFを吸い上げてバルブボディ内部に供給する役割があります。ここが詰まるということは、変速やクラッチ制御をつかさどるバルブボディにATFが供給されない、もしくは供給量が減少することで油圧が低下、結果的にバルブボディ内部での油圧制御が正常に行われず不具合にいたる。このミッションの不具合原因はこれで間違いないでしょう。油圧異常が発生すると、おのずとクラッチへの負担も増大してさらなるフェーシング剥がれを誘発。走行不能へ向かう悪循環におちいってしまいます。ちなみに、この車両のストレーナーに詰まった物質は、ほとんどがクラッチから剥離したフェーシングだと思われます。

では、なぜフィルターを詰まらせてしまうような物質が発生してしまったのでしょうか? 

要因はATFの劣化なのか?
ATFはエンジンオイルのように、「燃料による希釈」や「燃焼時に生成されるカーボンの吸着」などの環境にないため、通常の使用環境では劣化しにくい(理論上は劣化しない)のです。ただし、長時間高温にさらされるようなことが繰り返されると、ATFに求められる性能である「摩擦調整機能」「酸化安定性能」「潤滑性能と摩耗防止性」「動力伝達機能」「油圧機能(粘度維持性能)」が低下していくというデータがあるようです。「酸化防止性能の低下」はATFの酸化(劣化)、すなわちスラッジ生成の抑制性能の低下ということになります。「摩擦調整機能」が低下するとATミッション内の湿式クラッチ表面の負担が増大して異常摩耗の原因になり、その摩耗したものがATF内を浮遊することになります。「潤滑性能と摩耗防止性」が低下すると、プラネタリーギア(遊星歯車)の摩耗が進むことになり、摩耗したものが鉄粉としてATF内を浮遊することになり、それら鉄粉が油圧装置の内部摩耗の要因となります。
オートマチックトランスミッション搭載の自動車にはATFを冷却するためのオイルクーラーが必ず備わっています。それだけ高温になりやすい環境にあり、高温になることを嫌うということです。これらを踏まえてフィルターつまりの原因を考えてみると。「なんらかの原因で高温になったATFが劣化(酸化)してしまい。スラッジを生成しやすくなったり、湿式クラッチへの負担が増えて、摩耗しやすくなりクラッチ表面のフェーシングが剥離、それらが時間をかけて進行しながらフィルターを詰まらせた」ということが考えられます。

ATFが高温になる要因は?
急発進急加速の繰り返し、頻繁なストップ&ゴー、長い上り坂、長い渋滞状態などでもATFの油温は上昇します。ということは、優しい運転を心がける事でATFの劣化を遅らせることは可能ですが、日本の自動車の使用環境を考えると劣化自体を避けることはできなさそうです。

不具合を予防するには?
ATFが劣化するのを止めることはできませんので、定期的にATFを交換する必要があります。要するに「常にATFに求められる必要要件が満たされた状態にしておく」というわけです。あと大事なのは「急なアクセル操作を可能な限りしないようにする」ということ。急加速はミッション内部のクラッチに過大な負荷をかけます。これはオートマチックトランスミッションもマニュアルトランスミッションも同じです。過大な負荷がかかったクラッチが、通常よりも摩耗してしまうのは想像に難しくないと思います。ということは、新車からやさしいアクセル操作を続けている車両は、たとえATFを交換していなかったとしてもミッション異常を起こしずらいということも言えますね。

このようなトラブルが発生してしまったら?

今回の症状はアクセルを踏んでも空回りするだけで前進も後進もできないという症状でしたが。スズキの軽自動車で何度も経験しているトラブルです。ほとんどの場合はミッションをリビルド品や中古に載せ替える修理をしています。なかにはストレーナーの詰まりを掃除して組み付けてATFの圧送交換を行ったら走行可能になったケースもあります。直近でそのようなケースがあったのはこの記事を書く1年ほど前でしたが、そのワゴンRは今でも元気に走行しています。ただ、クラッチのフェーシングがフィルターを詰まらせるほど摩耗や剥離をしているわけですから、そのうちクラッチの動力伝達力が弱まり再び走行不能に陥るリスクが発生することを理解する必要があります。

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YouTubeチャンネル
増満自動車のYouTubeチャンネルで圧送交換の動画を見ることが出来ますNEW!

作業事例の紹介
ユーチューブ動画で紹介している車両もあります。
※【YouTube動画あり】の車両をクリックしてみて下さい。

トヨタ・レクサス
MR2|走行140,000km 54,200円

クラウン GRS180|走行145,000km 32,000円

ヴェルファイア|走行80,000km 51,000円

クラウンGSR184|140,000km 59,000円

ポルテ|15,000km

クラウンURS206|173,000km 69,000円

レクサス IS250|120,000km 69,000円 長崎県【YouTube動画あり

レクサス IS250|106,000km 69,000円 熊本県【YouTube動画あり】

ランドクルーザー|走行200,000km 宮崎県

ヴォクシーZRR70|150,000km 64,000円【YouTube動画あり】

ハイラックスサーフTRN215W|161,000km 58,000円【YouTube動画あり】

アリストJZS160|148,000km 【YouTube動画あり】

日産
ダットサントラック|走行160,000km 54,000円

Z33フェアレディZ|走行130,000km 43,000円

ラフェスタ|走行      68,500円

フーガ|走行89,000km 65,000円 宮崎県【YouTube動画あり】

スズキ
ジムニーシエラ|走行70,000km

セルボ|95,000km 42,500円

ランディSC25|112,000km 42,000円

ワゴンR MH23S|24,600km 46,000円 福岡県

ワゴンR MH23S|走行170,000km 41,500円

ワゴンR MH23S|走行160,000km 41,000円【YouTube動画あり】

MRワゴン|走行135,000km

ダイハツ
ムーヴ|走行98,000km

ムーヴコンテ L575S|走行118,000km 55,500円【YouTube動画あり】

スバル
サンバーディアス|走行130,000km 43,000円 宮崎県

ホンダ
バモス|179,000km 34,000円

ミツビシ
ミニキャブ|110,660km 37,800円 宮崎県【YouTube動画あり】

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